Re-FRAME

本や映画、歴史、旅、社会のありようを感じたままに。

安土城で見つけた信長と職人の攻防

安土城の説明は省略させていただく。旅先で訪ねたときの話を書きたい。 本能寺の変後、次の天下の趨勢を決める明智光秀と羽柴秀吉が争う山崎の戦い後まもなく、安土城は消失してしまう。理由は諸説あるが今だによくわかっていない。現在、城跡には天守閣跡ま…

『空母いぶき』と『鳴かずのカッコウ』の接点

仰々しくタイトルを付けておきながら、かわぐちかいじの漫画『空母いぶき』と手嶋龍一のインテリジェンス小説『鳴かずのカッコウ』の2冊を読んだ方なら、「接点」が何なのかはすぐにわかるだろう。 『カッコウ』の主人公は神戸公安調査事務所で働く新人青年…

仕事には貴賤があるから平等を叫ぼう

仕事に貴賤を感じてしまう自分が嫌だった。だが、結論から言うと貴賤はある。その貴賤を認めた上で「仕事は平等である」ということをここでは書きたい。「仕事には貴賤がある」ことを否定したいがために、「貴賤がない」と声高に叫ぶこと自体、もう既に「貴…

アメリカにとってゴジラは神たり得るのか 『ゴジラ―1』の私的所感

(ネタばれ含みます) 前作『シン・ゴジラ』に続き、最新作『ゴジラ-1(マイナスワン)』でも東京は蹂躙され、作中で日本人は何度も絶望に叩きのめされる。全ゴジラシリーズを鑑賞した私の所感としてこの2作品はこれまでのゴジラ映画とは一線を画している。…

藤原氏はどうして「藤原」なのか

奈良の春日大社を訪れたとき、藤の木がそこかしこに樹生していてふと思った。藤原氏が建てた神社であり、氏神でもある春日大社だから藤を大切にしているのだろう。ではこの藤たちは植えられたものなのか。あるいは生えていたものなのか。いやまてよ。そもそ…

歳を経て本が益々愛おしい

思えば人生の諸先輩方はよくおっしゃっていた。「本の主人公になれば自分とは違う人生を歩むことができる」「本には人類の叡智がつまっている」など。私の場合、それらの言葉の意味は理解できるものの、どうもピンと来なかった。少し大げさな感じがしていた…

会社会議のあり方に悩んで、裁判を傍聴した

私は会社の管理職として会議に出ることも多いのだが、うちの会社が会議下手過ぎて出席すると疲労感とストレスが半端ない。 まず、①議題が曖昧、ひどいと決まっていない。だから、②議題がころころ変わる。同じ意味で議題の深堀ができない。違う話が始まってし…

深夜、山中の祠(ほこら)でぶら下がるモノ

あなたはお化け、妖怪、幽霊、その他怪異なるモノは好きですか?私は好物です。でも、言うほど信じていません。「自分が感じたモノ」や「自分が信頼する人が見聞きしたモノ」以外は…。 これは取引先の社長から聞いた話。社長の趣味は鮎釣り。その日は早朝か…

姫路を化粧し、将軍喜悦す

姫路城を訪ねて驚いたのが、2代将軍・徳川秀忠の長女・千姫が一時期この城の姫として過ごしていたこと。7歳で豊臣秀頼と政略結婚した後、大坂夏の陣で戦火の中から救出されたのは有名だ。私自身「歴史好き」を標榜しながら、千姫がその後どうなったか知らな…

ウクライナ侵攻の終わり方

ロシアによるウクライナ侵攻がいつ終わるのかは、自前の諜報機関がないのでわからない。ただ終戦となる条件、終戦への工程・形は私なりにイメージしている。そのイメージを形作ったのはBBC放送を始め、英国情報機関「政府通信本部(GCHQ)」の公式アカウント…

走り抜けたべとべとさん

あなたはお化け、妖怪、幽霊、その他怪異なるものは好きですか?私は好物です。でも、言うほど信じていません。自分が感じたモノ以外は。 子どもの頃、私はマンションに住んでいて、自分の部屋の壁隣りがマンションの廊下になっていた。私はよく部屋の窓を大…

傾く殿様の悪乗りを感じた忍者寺

(一) 加賀百万石祈願所、日蓮宗/正久山妙立寺(みょうりゅうじ)。またの名を「忍者寺」と言う。妙立寺に忍者がいるからではない。「忍者屋敷のような」お寺という意味だ。建立したのは加賀藩三代藩主・前田利常。寛永20年(1643年)に金沢城近くから移築し…

D・カーネギー『道は開ける』を読んで、遠藤周作に思いを馳せる

(一) D・カーネギー著『道は開ける』は「あらゆる人間に共通する『悩み』の実態とそれの克服法を述べたものである」(「訳者まえがき」より)。カーネギー自身がその生い立ちや中々売れなかった役者時代など悩み多き人生の中で、「悩み」に対してどう取り…

明治に記された『現代日本の開化』が示す未来

(一) 夏目漱石著『現代日本の開化』は明治44年(1911年)に大阪朝日新聞社主催の関西講演会で行われた講演筆記を改稿した評論である。私がこの著作にふれたのは、高校生だったか大学生だったか。印象として、正直ピンと来なかった。題名にある「現代日本」…

此岸から宮島を臨む

(一) フェリーの甲板上の足元からゆっくり顔を上げると、視界には海が飛び込んできて、海のその最奥に朱色の鳥居が見えてきた。鳥居の背後には黒に近い緑を纏った山容が広がっている。宮島だ。 「宮島」という名称と「厳島」という名称のどちらが正しいの…